株式会社設立の条件とは?必要な手続きを詳しく解説
株式会社設立に必要な条件、設立手続きの流れ、設立に要する費用などについて解説しています。
会社設立は、理屈では簡単に思えるのですが、実際に動き始めてみると、とても煩雑で手間が掛かるもの。幸先よく本業をスタートさせるため、専門家の力を借りながら会社設立を進めていくことが理想です。
目次
株式会社の設立に必要な基本的条件
会社設立に必要な基本的条件を7点ほど確認してみましょう。
人数に関する条件
株式会社設立に必要な人数は最低1名です。
会社設立には発起人・株主・取締役の三者が必要ですが、これら三者を1人で兼務することが可能なので、1人でも株式会社は設立できます。
なお、かつては取締役3名以上が必要とされていましたが、平成18年5月から施行されている改正会社法により、人数の条件が緩和されました。
発起人に関する条件
株式会社設立に向けた手続きを行うにあたり、最低1名の発起人を設定する必要があります。発起人とは、会社設立手続きを具体的に進めていく立場の人です。
発起設立の場合には、発行する株式の全てを引き受けて出資しなければなりません。つまり、発起人はそのまま株主にもなるということです。
なお、発起人は最低1名と規定されていますが、もちろん複数人でも構いません。ただし、発起人が複数人となった場合、会社設立に向けた意思決定に時間が掛かることもあります。
取締役に関する条件
発起人は、会社設立後に取締役となる人物を決めなければなりません。一般的には、発起人がそのまま取締役となります。
会社設立後に取締役会を設置する場合には複数名の取締役を決めておく必要がありますが、取締役会を設置する予定がない場合には1名の取締役を決めておくだけで問題ありません。
代表取締役に関する条件
取締役を選任した後、一般的には会社業務に関する一切の権限を有する代表取締役を決めることになりますが、取締役会を設置する場合を除き、代表取締役を設定しなくても問題はありません。1人会社の場合、自分が代表取締役になることもできれば、一般的な取締役のままで業務を行うことも可能です。
複数人の取締役がいる会社の場合、1人を代表取締役に設定することも、複数名を代表取締役に設定することもできます。
役員に関する条件
会社法上の役員には取締役・監査役・会計参与の三者がありますが、取締役会を設置した場合には3名以上の取締役、および監査役または会計参与を設置する必要があります。
1人会社の場合には取締役会を設置しないため、他の役員も設置する必要はありません。
取締役会に関する条件
株式公開をする予定の株式会社、および非公開会社のうち監査役会・監査等委員会・指名委員会等を設置する株式会社は、取締役会を設置する必要があります。
これらの条件に該当しない会社については、取締役会の設置は任意となります。なお、取締役会を設置する場合には、3名以上の取締役を選任しなければなりません。
年齢に関する条件
会社法では、株式会社を設立できる年齢に関する規定はありません。一方、2022年4月から施行されている改正民法では、親の同意なくして法定行為ができる年齢を18歳と規定しています。この規定に基づけば、親の同意なくして株式会社を設立するためには、18歳以上であることが条件となるでしょう。
一般的な理解においても親の同意なくして会社設立できる年齢は18歳以上とされ、親の同意のもとで会社設立できる年齢は15歳以上とされています。
株式会社設立の手続きの流れ
株式会社設立の大きな流れを見てみましょう。
1.会社概要を決める
発起人が会社概要を決めます。会社概要とは、具体的には次のような内容です。
- 事業の目的
- 会社の商号(会社名)
- 本店の所在地
- 資本金の額
- 会社設立日
- 公告の方法
- 全発起人の出資額
- 発行可能株式総数
- 設立時発行株式総数
- 株主構成
- 事業年度
- 設立時代表取締役・設立時取締役など会社の機関
- 株式譲渡制限の有無、など
会社概要は、のちに作成することとなる定款の基礎となる重要な内容です。初めて会社設立する方は、専門家のアドバイスを受けながら内容を検討したほうが良いでしょう。
2.会社実印を作成する
法務局へ会社設立登記の申請を行う際、必要書類の1つとして印鑑届出書を用意しなければなりません。印鑑届出書とは、会社の実印を押した書類のことです。
個人の場合は役場に実印を押した書類(印鑑登録申請書)を提出しますが、会社の場合は法務局に実印を押した書類(印鑑届出書)を提出します。
実印がなければ印鑑届出書を提出できないため、会社設立登記もできません。そのため、会社名が決まったら早急に実印を作成しましょう。実印を作成する際には、あわせて銀行印や角印、ゴム印なども作成しておけば二度手間になりません。なお、2021年2月15日以降、会社設立登記はオンライン申請が可能となり、もしオンラインで申請する場合には印鑑届出書の提出は不要となりました。
ただし、会社設立後に実印が必要となるケースも少なくないため、オンライン申請を予定している方にも、この段階で実印を作成しておくようおすすめします。
3.定款を作成する
会社の概要を決めたら、概要に沿った内容をより詳細に記した定款(ていかん)を作成します。定款とは「会社の憲法」とも言われる非常に大事な書類です。作成後、簡単に内容を変更することはできないので、専門家に相談しながら適切に作成することが望ましいでしょう。
作成した定款は公証役場に提出し、公証人によるチェックを受けなければなりません。公証人とは、元・裁判官や元・検察官などの中から法務大臣が認定する法律の専門家です。法律にしたがって正しく作成されているかどうか、詳細に定款の中身を確認します。
定款の内容に問題がなければ「定款認証」というプロセスが終了。定款認証を省いて会社設立登記を申請することはできません。
4.資本金を払い込む
定款認証を受けた後、発起人等の出資者は資本金を払い込みます。この時点では会社が設立されていないので、会社名義の銀行口座はありません。そのため、一時的に発起人等の個人口座へ資本金を集約させる形となります。
会社設立後、会社名義の銀行口座を開設して資本金を移管する形です。資本金が全額払い込まれた後、通帳の表紙・裏表紙・払い込み状況が印字されているページをコピーし、会社設立登記の申請書類の1つとして提出します。なお、資本金の払い込みは定款認証を受ける前でも構いませんが、あまり早い段階で払い込みをした場合、個人のお金の動きと区別しにくい状態となりかねません。
法務局の誤解を生まないよう、定款認証の直前・直後のタイミングで資本金を払い込むようおすすめします。
5.会社設立登記の申請を行う
会社設立登記に必要な書類をそろえ、会社の本店所在地を管轄する法務局へ全書類を提出(オンライン申請も可)。提出書類に不備・問題がなければ、無事に会社設立登記が完了します。なお、申請から登記完了までに約1週間の期間を要しますが、「会社設立日」は登記が完了した日ではなく、申請した日となります。
株式会社設立に必要な費用
株式会社設立に要する主な費用を見てみましょう。
定款用収入印紙代
定款は書面、または電子媒体のどちらかで提出することになりますが、書面で定款を提出する場合には40,000円の収入印紙を購入して貼付する必要があります。電子媒体で定款を提出する場合には、収入印紙は必要ありません。
定款認証料
公証役場で定款を認証してもらう手数料として50,000円が必要となります。謄本代として別途2,000円も用意します。
登録免許税
株式会社の法人登記を行う際、登録免許税として最低150,000円の納税が必要です。
印鑑の作成費用
会社実印、銀行印、角印、ゴム印などの作成費用として10,000~数万円は必要になります。印鑑の素材にこだわれば数十万円になることもあるでしょう。
以上の費用を合計すると、最低で200,000円ほど。一般的には250,000円ほどを用意しておいたほうが良いとされています。
なお、司法書士や公認会計士などのサポートを受けて会社設立した場合、別途で報酬の支払いが必要となります。司法書士報酬等の金額は事務所によって大きく異なるので、事前に確認しておきましょう。
【まとめ】株式会社設立の基本条件と手続きの流れ
- 株式会社の設立には最低1名の発起人・株主・取締役が必要で、これら3つの役職を1人が兼任可能。
- 発起人は会社設立の手続きを進め、発行する株式の全てを引き受けて出資する。
- 定款を作成し、公証役場に提出して公証人によるチェックを受ける。
- 定款認証後、発起人等の出資者は資本金を払い込む。会社設立後、会社名義の銀行口座を開設して資本金を移管する。
- 株式会社設立には最低で約200,000円程度の費用が必要で、一般的には250,000円程度を用意することが推奨されている。