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株式会社設立に必要な人数は?1人からでも設立できる?

1人で何らかのビジネスを展開する場合、一般的には個人事業主として経営を進めるイメージがあります。しかし、平成18年の会社法改正以降は、株式会社も1人で経営することが可能となりました。

1人で経営する以上、個人事業主でも株式会社でも実質的に行う商売の中身は同じかもしれません。ですが、商売の中身とは別に株式会社ならではのメリットもあります。この記事では、株式会社の設立に必要な人数、1人会社のメリット・デメリット、1人会社を設立する時の注意点などについて解説しています。

株式会社は1人でも設立できる

株式会社は1人でも問題なく設立可能です。株式会社の設立・経営に必要な社内人材は、①発起人、②株主、③取締役の三者。これらのうち、発起人として必要な人数は最低1名、株主として必要な人数も最低1名、取締役として必要な人数も最低1名です。

また、発起人・株主・取締役の三者は同一人物が兼任しても法的に問題ありません。すなわち、株式会社は社長1人いれば設立できる、ということになります。なお、社長1人で設立して経営している会社のことを「1人会社」と呼ぶこともあります。

かつては取締役が3人必要だった

現在は取締役1人でも株式会社設立・運営できることとなりましたが、かつては取締役3名以上を設定しなければ、株式会社を設立できませんでした。平成18年5月に改正会社法が施行され、従来の会社設立・運営に関するルールが大幅に変更。

この法改正以後、株式会社は1人でも設立可能となりました。なお、現在でも「取締役会」を設置する場合には、かつてと同様に3名以上の取締役が必要となります。

株主と役員の違い

1人会社を設立する場合、1人で株主と役員(取締役)を兼任する形となります。株主と役員はそれぞれ役割が違うため、ここで簡単に両者の役割を理解しておきましょう。

株主とは、その会社の設立・経営における出資者のこと。会社が順調に事業を運営できるよう、資金的なサポートを行う立場を言います。もし会社が倒産した場合、出資したお金は戻ってこない可能性がありますが、出資したお金以上に責任を負うことはありません(有限責任)。

一方で役員とは、会社経営の意思決定を行う立場のこと。会社法では取締役・監査役・会計参与の三者を役員と規定していますが、一定の要件を満たした株式会社については、役員は取締役1人のみでも構いません。

1人で株式会社を設立するメリット

1人で株式会社を設立するメリットを3点ほど見てみましょう。

複数人で会社設立するよりも流れがスムーズ

株式会社の設立にあたり、事前に決めるべきことが非常にたくさんあります。例えば事業目的、資本金額、発行可能株式総数、事業年度などです。もし発起人が複数いれば、これらの事項について意見の相違が生まれるかもしれません。

互いに妥結を導くためには、手間や時間が掛かる可能性もあるでしょう。1人会社なら、これらの事項を1人で決めることが可能です。会社設立に向けた意見の相違自体が存在しえないため、設立までの流れがスムーズになります。

経営意思決定のスピードが早くなる

もし複数の役員で会社を経営する場合、重要な場面で見解の相違が生まれるなどし、経営意思決定のスピードが鈍化する可能性もあります。一方で1人会社の場合は、他の役員が存在しないため、見解の相違自体が生まれません。

ビジネスを成功へ導くためには戦略も重要ですが、スピードも非常に大切です。経営意思決定のスピードが早くなる点は、1人会社ならではのメリットと言えるでしょう。

固定費の節約につながる

複数人で運営する会社の場合、給料や社会保険料の負担、福利厚生など、様々な固定費が発生します。経営が軌道に乗るまでの間でも、これらの固定費を抑えることはできません。

その点、1人会社なら固定費が1人分で済むため支出が少なくなります。売上が安定しない設立間もない頃は、特に固定費の節約が大きく経営を支える要素になるでしょう。もとより1人会社なら、外へオフィスを借りずとも自宅で仕事をすることが可能です。家賃や光熱費等の固定費も節約できます。

1人で株式会社を設立するデメリット

1人で株式会社を設立する主なデメリットを3点ほど見てみましょう。

複数人が運営する株式会社に比べて社会的信用が低くなる

複数人で運営している株式会社に比べ、どうしても1人会社のほうが社会的信用は低くなるでしょう。1人会社よりも複数人が在籍する会社のほうが、一般的にはバランスの良い運営がなされます。

また、複数人が在籍する会社なら、そのうち1人が病気等で働けなくなったとしても、別のメンバーが代わりに対応できます。1人には1人会社ならではの限界があるため、取引先にとってリスクになりかねません。リスクがある分、社会的信用は低くなる可能性があるでしょう。

経営上の全ての問題を自分一人で解決しなければならない

社内に相談相手がいない以上、経営上の全ての問題を自分一人で解決しなければなりません。自分で判断できないことを税理士などの専門家へ相談することもあるかもしれませんが、専門家からの意見や提案を採用すべきかどうかを相談する相手もいないため、誰のサポートを受けようとも結局は自分1人で経営上の決断をすることとなります。

もし誤った判断をした場合、これを修正するのも自分1人です。心身共に困憊することもあるでしょう。

目指せる売上規模に限界がある

1人会社の場合、基本的には1人分の仕事しかできません。一方で、2人会社の場合には3人分の仕事、3人会社の場合には6人分の仕事ができることもあります。

このように、経営には人数に応じたレバレッジが効くと考えられていますが、1人会社では人数のレバレッジを効かせられません。おのずと、目指せる売上規模に限界が生じます。

1人で株式会社を設立する時の注意点

1人で株式会社を設立する際の主な注意点を見てみましょう。

自分の役員報酬をいくらにするか

会社から経営者自身に支払う給料を役員報酬と言いますが、役員報酬は会社の損金に計上できるため、役員報酬の額が高ければ高いほど法人税等の節税効果が生まれます。

一方で、役員報酬を高くすると経営者個人の所得税が上がります。会社の税金と個人の税金のバランスを考慮し、より高い節税効果を導ける役員報酬を検討する必要があるでしょう。

なんでも経費にできるわけではない

個人事業主に比べ、株式会社は経費項目の範囲が広くなると言われていますが、なんでも経費にできるわけではない点に注意しましょう。

注意したいのが福利厚生費です。例えば、従業員のランチ代や旅行代なら福利厚生費として経費計上できますが、あくまでも福利厚生費は従業員の支出に関する経費となるため、1人会社の社長のランチ代や旅行代は福利厚生費になりません。

社会保険に加入する必要がある

1人会社であっても、原則として社会保険に加入する義務があります。個人事業主は国民年金・国民健康保険のセット加入となりますが、会社経営者は厚生年金・社会保険のセット加入となります。

厚生年金・社会保険のほうが保険料の負担額は大きくなることを理解しておきましょう(将来受給できる年金額も大きくなります)。

【まとめ】株式会社設立の一人経営:メリット、デメリットと注意点

  • 会社法の改正により、株式会社は1人で設立可能であり、発起人、株主、取締役の三者を同一人物が兼任することが法的に認められています。
  • 1人で株式会社を設立するメリットとして、経営意思決定のスピードが早く、固定費の節約が可能である一方、社会的信用が低くなり、経営上の全ての問題を自分一人で解決しなければならないというデメリットがあります。
  • 1人会社の場合、売上規模に限界があり、人数に応じたレバレッジを効かせることができません。
  • 1人で株式会社を設立する際には、役員報酬の設定や経費項目の範囲、社会保険への加入などを適切に管理する必要があります。
  • 1人会社の社長のランチ代や旅行代は福利厚生費として経費計上できず、厚生年金・社会保険への加入が必要であることを理解する必要があります。

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