会社設立で本店所在地には誰の住所を記入すればいいの?
本記事では会社設立時に選ぶべき住所の選択肢として、自宅、賃貸事務所、レンタルオフィスなど計5種類、それぞれのメリット・デメリットを解説しています。
また、賃貸事務所の借り方の注意点や、会社設立の住所に関する基礎知識も紹介しています。適切な住所選びは、経費節約や取引先からの信頼獲得につながるため、慎重に検討することが重要です。
目次
自宅
少しでも経費を節約したいと考えた時、最初に会社の住所として浮上する場所が自宅です。自宅を本店所在地として会社設立するメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット
物件に関する初期費用やランニングコストを節約できる点が、自宅を本店所在地にする最大のメリットでしょう。
また、業務に使用しているスペースに応じ、住宅ローンの返済や水道光熱費の一部を経費にできることも、自宅で会社設立する大きなメリットになるでしょう。
デメリット
自宅が会社住所として公開されることで、防犯やプライバシーの面でのリスクが懸念されます。
また、重要な打ち合わせで取引先の担当者を自宅に招くことには、どこか違和感があります。
もとより、自宅がマンションの場合には法人登記が禁止されていることもあるので、事前に契約内容を確認しておくべきでしょう。
賃貸事務所
会社設立をする場所として、賃貸事務所が選ばれることも少なくありません。
はじめから事務所としての利用を前提としている物件なので、もちろん法人登記しても問題ありません。
メリット
取引先から信用されやすい点が、賃貸事務所で会社設立する大きなメリットです。
賃貸事務所を契約するためには、事前に代表者の「社会的信用力」が審査されます。
賃貸事務所で会社設立できたということは、一定の社会的信用力があることの証拠でもあるので、取引先からの信用を得られやすいでしょう。
事業の種類や規模に応じ、同じフロアに複数の部屋を借りられたり、1つの部屋のレイアウトを変えられたりできる点も、賃貸事務所のメリットと言えます。
デメリット
初期コストとランニングコストが高くなる点は、賃貸事務所で会社設立するデメリットになるでしょう。
特に初期コストについては、契約時に敷金(保証金)が3~12か月分ほど掛かります。仮に家賃が月額30万円で敷金が10か月分の場合、契約時の敷金だけで300万円もの資金が必要です。
また、同じ広さの部屋を借りる場合でも、住宅用物件に比べると事務所用物件のほうが家賃相場は高めになります。
レンタルオフィス
レンタルオフィスとは、あらかじめデスクや椅子、事務用品などが備えられた小規模なオフィスのことです。
自分専用の空間(デスクなど)が用意されている点が、後述するコワーキングプレイスとの大きな違いです。
メリット
一般的な賃貸事務所に比べ、初期費用やランニングコストを大幅に節約できる点がレンタルオフィスのメリットです。
必要最低限の事務作業のみを行う場所としては、レンタルオフィスでも十分に機能します。
デメリット
自分専用のスペースは用意されているものの、多くの場合は非常に狭いスペースとなるため、社員を増やしたり事業拡大したりするには限界があります。
また、頻繁な打ち合わせや商談が想定される場合には、別途で会議室や応接室などが用意されているレンタルオフィスを借りたほうが良いでしょう。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、事務所の住所のみをレンタルするサービスです。借りられるのは住所のみですので、事務スペースや実店舗は別に用意する必要があります。
バーチャルオフィスの住所に届いた郵送物を転送してくれるサービスや、電話代行してくれるサービスのあるバーチャルオフィスもあります。
メリット
基本的に住所をレンタルするのみのサービスですので、初期コストもランニングコストも低めです。
また、取引先にバーチャルオフィスであることを明かさず都内の一等地などに本店所在地を置けば、取引先からの信頼につながるかもしれません。
デメリット
実際に事務所があるわけではありませんので、取引先と商談する際には別の場所を設定しなければならない点がデメリットです。
また、許認可が必要な会社(士業、建設業、不動産業など)の場合、許認可の申請書類の中に「賃貸借契約書」を求められるケースがあります。
バーチャルオフィスでは賃貸借契約書を発行できないため、許認可を取得できないことがある点にも注意しなければなりません。
さらに金融機関の中には、バーチャルオフィスでの法人口座開設ができないところもあるため、幅広く取引する際の支障になることもあります。
コワーキングスペース
コワーキングスペースとは、多種多様な職種の人たちが働いている共有施設を言います。
レンタルオフィスとは異なり、実務を行う個室や個別スペースはなく、広いデスクなどが置かれたオープンスペースでそれぞれが仕事を行っています。
メリット
作業を行うための必要最低限の設備が整っている一方で、初期費用やランニングコストを安く抑えられることがコワーキングスペースの大きなメリットでしょう。
また、様々な職種の人が場所を共有していることから、利用者同士の交流が生まれて新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
デメリット
法人登記が認められていないコワーキングスペースもあるため、会社設立する際には事前に確認が必要です。
また、仮に会社設立できるコワーキングスペースであっても、個室ではないことを理由に許認可を取得できないケースもある点に注意が必要です。
賃貸事務所の借り方の注意点
会社の本店所在地を賃貸事務所にする場合、賃貸契約をしてから会社を設立すべきか、それとも会社を設立してから賃貸契約をすべきか、という点が問題になります。
結論から言うと、会社設立してから賃貸契約することをおすすめします。
会社設立してから賃貸契約することをおすすめする理由
会社設立前に賃貸事務所を借りる場合、契約者は個人になります。個人名義で事務所を借りる以上、多くの場合は誰かに連帯保証人となってもらわなければなりません。
快く連帯保証人になってくれる人が見つかれば良いのですが、スムーズに見つからない場合もあるでしょう。
一方で、先に会社設立をすれば、会社名義で賃貸事務所を借りられます。この場合、代表自らが連帯保証人になることも可能ですので、実質的に1人で事務所を借りられます。
連帯保証人を探すことが難しいと想定される場合には、先に会社設立することを検討すると良いでしょう(事前に賃貸事務所の規約を確認することが必要です)。
会社設立の「住所」に関する基礎知識
会社設立の住所に関する基礎知識として「登記住所の変更の可否」、および「会社住所が融資・助成金に与える影響」について確認しておきましょう。
登記住所の変更の可否
設立時に登録した会社の住所(本店所在地)は事後的に法務局で変更できます。
この際、まず確認したい点が「定款を変更する必要があるかどうか」という点です。同一市区町村内での住所移転であれば、定款を変更する必要がないことを覚えておきましょう。
なお、会社の住所を変更する際に法務局へ支払う登録免許税は、法務局1か所につき3万円です。同じ法務局の管轄区域内で住所変更する場合には、法務局1か所での手続きとなるため、登録免許税は3万円で済みます。
一方、別の法務局の管轄区域内に住所変更する場合には、法務局2か所での手続きが必要になることから、登録免許税は倍の6万円となります。
会社住所が融資・助成金に与える影響
信用金庫は、特定のエリア内に住所のある事業者にしか融資しないのが一般的です。
そのため、別のエリアに会社の住所を移転した場合には、今まで付き合いのあった信用金庫から融資を受けられなくなる可能性がある点にご注意ください。
また、自治体が用意している助成金制度は、その自治体内に住所のある事業者しか利用できない場合があります。
特定の助成金を申請する予定のある会社が住所変更する場合には、事前にその助成金の申請条件を確認しておく必要があります。
まとめ
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自宅での会社設立
- メリット:経費節約
- デメリット:防犯・プライバシーリスク、取引先との違和感
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賃貸事務所での会社設立
- メリット:信用力向上
- デメリット:高い初期・ランニングコスト
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レンタルオフィスでの会社設立
- メリット:コスト抑制
- デメリット:狭いスペース
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バーチャルオフィスでの会社設立
- メリット:低コスト、信頼向上の可能性
- デメリット:商談場所設定必要、許認可取得困難
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コワーキングスペースでの会社設立
- メリット:低コスト、交流の機会
- デメリット:法人登記・許認可取得の制限
- 賃貸事務所の借り方:会社設立後に賃貸契約がおすすめ
- 住所変更の注意点:融資・助成金制度への影響を確認することが重要