建設会社の設立に必要な申請・費用・書類をまとめて解説
ここでは、建設会社を設立する際に必要な申請や費用、書類などについて網羅的に解説しています。
建設会社を設立するには、法務局で会社設立登記を行った上で、都道府県知事や国土交通大臣から建設業許可を取得する必要があります。
建設業許可の取得には数か月の時間を要することもあるため、事業開始日から逆算し、余裕を持った時期から設立を進めていくことが大切です。
目次
建設会社を設立するために必要な法的条件とは
建設業許可を取得する
一定の基準で定められた軽微な建設工事を行う建設会社であれば、建設業許可を取得する必要がない場合もあります。
逆に、その基準には該当しない建設会社であれば、建設業許可を取得しなければ営業できません。
建設業許可は業種に応じて28種類に分かれますが、それぞれの許可は「都道府県知事」または「国土交通大臣」から取得する必要があります。
都道府県知事による建設業許可
1つの都道府県内に営業所を設ける場合には、営業所がある都道府県知事の建設業許可を取得します。
国土交通大臣による建設業許可
2つ以上の都道府県にまたいで営業所を設ける場合には、国土交通大臣の建設業許可を取得します。
一般建設業許可と特定建設業許可
建設業許可には、一般建設業許可か特定建設業許可の2種類があります。
一般建設業許可
自社が受注した工事を下請会社に依頼しない場合や、1件の工事代金が3000万円(建築一式工事の場合は4500万円)未満の場合、一般建設業許可の取得が必要です。
特定建設業許可
受注した1件の工事について、下請会社に依頼する工事代金が3000万円(建築一式工事の場合は4500万円)以上の場合には、特定建設業許可を取得する必要があります。
建設業許可を取得するための要件
建設業許可を取得するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
- 経営業務責任者がいる
- すべての営業所に専任技術者がいる
- 誠実性を有している
- 財政的基盤がしっかりしている
- 欠格要件に該当していない
「営業業務責任者」と「専任技術者」については、当ページの後半で詳しくご紹介します。
建設会社の設立に必要な書類
建設会社を設立する場合には、まず株式会社(合同会社、個人事業主も可)を設立した後に、都道府県知事または国土交通大臣へ建設業許可申請を行う必要があります。
それぞれの手続きで必要となる主な書類は次の通りです。
株式会社の設立に必要な書類
- 設立登記申請書
- 定款
- 設立時取締役選任決議書
- 払込証明書
- 資本金計上に関する証明書(現物出資ありの場合)
- 設立時代表取締役の印鑑証明書
- 身分証明書
- 印鑑届出書 など
建設業許可申請に必要な書類
- 株式会社の定款
- 株式会社の履歴事項全部証明書
- 建設業許可申請書
- 工事経歴書
- 経営業務の管理責任者証明書
- 専任技術者証明書
- 実務経験証明書
- 国家資格者等・監理技術者一覧表
- 納税証明書 など
建設会社の設立に必要な費用:合計292,000円~
株式会社の設立費用と建設業許可申請の費用を合計し、最低292,000円の費用で建設会社を設立できます。
なお、司法書士や公認会計士・税理士などに設立手続きの代行を依頼した場合には、別途で報酬を支払う必要があります。
株式会社の設立に必要な費用
- 登録免許税:150,000円(※1)
- 定款認証手数料:52,000円
- 定款印紙代:40,000円(※2)
※1:収入印紙で納付する場合には、印紙を登録免許税納付用台紙に貼付して税務署へ納付します。
※2:定款印紙代は「電子定款」を利用すれば無料になります。
建設業許可申請に必要な費用
- 新規許可(都道府県知事):90,000円
- 新規許可(国土交通大臣):150,000円
建設会社の設立に必要な時間
株式会社の設立にかかる時間は、専門家に手続きを代行した場合で7~10日間ほど。
建設業許可の取得までに要する時間は、都道府県知事の場合が約1か月で、国土交通大臣の場合が約4か月です。
建設業許可に要する時間が長くなるため、余裕のある時期から計画的に設立手続きを進めることが大切です。
建設業界が受けられる補助金の種類
建設業界が受けられる主な補助金制度として、「トライアル雇用助成金」「人材確保等支援助成金」「人材開発支援助成金」の3種類があります。
それぞれの概要を確認してみましょう。
トライアル雇用助成金
一定期間にわたり従業員を試行雇用した中小建設事業者に給付される助成金です。
例えば35歳未満の若年層を一定期間試行雇用した中小建設事業者には、1人の雇用につき月額最大40,000円のトライアル雇用助成金が給付されます(最長3か月)。
詳細は厚生労働省の公式HPをご確認ください。
※参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
人材確保等支援助成金
若年層や女性の入職率目標を達成した中小建設事業者、若年層や女性の入職・定着を図る事業に取り組んだ中小建設事業者などに対し、人材確保支援助成金が給付されます。
給付金額は条件により多岐にわたります。詳細は厚生労働省の公式HPをご確認ください。
人材開発支援助成金
従業員に対して専門的な知識・技能を習得させるための取り組みを行った事業者に対し、訓練に要した経費や賃金の一部が助成される制度です。
給付金額は条件により多岐にわたります。詳細は厚生労働省の公式HPをご確認ください。
※参考:人材開発支援助成金|厚生労働省
会社設立の流れ
建設会社であれ、その他の業種の会社であれ、基本的な設立の流れは同じです。
建設会社を含め、一般的な会社設立の流れを確認しておきましょう。
一般的な会社設立の流れ
1. 会社設立に関する基本事項を策定
商号、事業目的、本店所在地、資本金額、発起人、設立時発行株式総数、役員、事業年度・決算日など、会社の基礎となる事項を策定します。
建設業許可の取得を前提とする場合、事業目的に注意する必要があります(詳細は後述)。
2. 発起人・取締役の印鑑証明書を取得
発起人と取締役、それぞれ個人の印鑑証明書を取得します。
発起人の印鑑証明書は定款作成時、取締役の印鑑証明書は登記申請時に必要となります。
3. 会社の実印を作成
会社の実印(代表者印)を作成します。
作成した会社の実印は、本店所在地を管轄する法務局で印鑑登録を行います。
4. 定款を作成
「会社の憲法」とも言われる定款を作成します。
記載に漏れがある場合には定款認証されず会社設立できないため、多くの場合は専門家のサポートのもとで定款を作成しています。
5. 定款の認証
作成した定款について、公証役場で認証を受けます(合同会社は不要)。
紙ベースではなく電子媒体で定款を作成した場合には、印紙代の40,000円が無料になります。
6. 資本金の払い込み
発起人の個人口座に出資金を入金する形で資本金を払い込みます。
入金した人と金額が分かるよう、現金の預入ではなく振込で入金します。
7. 会社設立登記に必要な書類の作成
会社設立登記に必要な書類を作成します。
登記申請書、払込証明書、取締役全員の身分証明書、印鑑届出書などです。
8. 会社設立登記
必要書類を揃え、法務局で会社設立登記の申請を行います。申請は郵送でも可能です。
定款・登記申請書に「事業目的」を記載する際の注意点
建設業許可を前提として会社設立する場合には、定款や登記申請書の「事業目的」の記載に注意する必要があります。
事業目的とは、会社が行う予定の事業を具体的に記載したもの。
会社は事業目的の範囲内でしか営業活動ができないため、許可を取得する予定の工事業種について、事業目的の中で明確に記載しておかなければなりません。
なお、事業目的に記載した事業を「必ず行わなければならない」という決まりはありません。
そのため、事後的な定款変更などの手間がないよう、将来行う可能性のある業種はすべて記載しておくと良いでしょう。
また、事業目的の最後には、「各号に関連する一切の事業」と補足的に記載しておけば、定款変更せずに幅広い工事を手がけることが可能になります。
建設会社設立に関連する基礎知識
建設会社設立を検討する際の基本的な用語や資格を確認しておきましょう。
必ず営業所に配置しなければならない人材
管理責任者(経営業務管理責任者)
対外的に営業所の責任を有する立場の者を、経営業務管理責任者と言います。
常勤の取締役を1人以上配置する必要があります。
専任技術者
専門工事の知識と技術を有する者を専任技術者として配置します。
常勤である必要はありますが、管理責任者とは違って取締役である必要はありません。
建設業の主な種類
ゼネコン
国や自治体などから工事を直接受注する大手企業がゼネコンです。
後述するサブコン以下の事業者を取りまとめる役割もあります。
サブコン
ゼネコンから工事を直接受注する企業がサブコンです。
サブコンが受注した工事の多くは、中小の下請事業者に振り分けられます。
設計事務所
ビルやショッピングモール、病院などの大型施設から、一戸建ての注文住宅まで、大小様々な建築物の設計を担う事業者が設計事務所です。
ハウスメーカー
自社オリジナルで規格化された建材を工場で生産し、個人住宅を多く供給している建設会社をハウスメーカーと言います。
工務店
地域密着型で建設工事を行っている小規模な建設会社を工務店と言います。
また、営業エリアを拡大した大規模な工務店のことをビルダーと呼ぶこともあります。
建設業界に関連する主な資格
建築士
建物の設計と工事監理を独占的に行う国家資格が建築士です。一級、二級、木造の3種類があります。
施工管理技士
工事現場の進行管理を担う国家資格が施工管理技士です。建設施工管理技士、土木施工管理技士、電気工事施工管理技士など計7種類があります。
コンクリート診断士
コンクリートを主要素材とした構造物の診断・維持管理を担う民間資格がコンクリート診断士です。
コンクリート構造物の老朽化が問題視されている昨今、注目されている建築関連資格になります。