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会社設立の融資を受ける時、日本公庫と銀行どちらがおすすめ?

会社設立に使える日本公庫の新創業融資制度

会社設立に際し、大半の方は融資を活用します。融資にも様々なタイプがありますが、できることならば、無担保・無保証人の融資を受けられれば、それに越したことはありません。
新創業融資制度とは、志の高い創業者に対し、原則として無担保・無保証人で提供している融資制度。政府系金融機関の日本政策金融公庫(略称:日本公庫)が用意している融資制度の一つで、設備資金または運転資金として限度額3000万円まで融資を受けることができます(3000万円のうち運転資金は1500万円まで)。

なお、設備資金とは「事業に関わりのある資産性ある設備の購入資金」のこと。飲食業であれば、テーブルや椅子、厨房機器、空調機などの購入資金が設備資金になります。一方で運転資金とは、「事業を継続していく上で必要となる資金」のこと。人件費、広告宣伝費、商品の仕入代金などが事業資金になります。

新創業融資制度を利用できる人

日本政策金融公庫の公式HPによると、新創業融資制度は次の2つの要件を同時に満たす方のみ利用が可能となっています。

  • 新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方
  • 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金を言います。)を確認できる方。ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

※参照:日本政策金融公庫公式HP

注意されたい点は、新創業融資制度は単独で利用することができないこと。「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」などの融資制度のオプションという位置づけなので、本申し込みをした融資に付帯させる形で利用することになります。

「自己資金」について

新創業融資制度を利用できる人の要件として「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金」があります。ここに言う「自己資金」の意味を明らかにしておきましょう。

「自己資金」とは、他人に返す必要のない自分のお金のことです。預貯金、株式、債券、親からもらったお金など、その種類は問わず、処分の決定権が自分のみにあるお金のことを「自己資金」と言います。

逆に、他人に返す必要があるお金については「自己資金」とみなされません。親から借りたお金や金融機関から借りたお金など、たとえ使途の裁量権が自分にあったとしても、いずれ返済しなければならないお金は「自己資金」にならない点に注意が必要です。
他人から借りたお金を一時的に自分の口座に入れ、さも「自己資金」であるかのように説明して融資を申し込んだ場合、会社法における「見せ金」として処罰される可能性があるのでご注意ください。

資金使途について

新創業融資制度で借り入れたお金の資金使途について、日本政策金融公庫では「新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金」(※)と規定しています。
具体的には、例えば次のような使途であれば問題がありません(例)。

  • 事務所や店舗の内装工事費用
  • 事業で使用する設備の購入費用
  • 事業で使用する車の取得費用
  • ホームページ作成費用
  • 事務所や店舗の家賃
  • 広告宣伝費
  • 従業員の人件費
  • 商品の仕入代金
  • 事務所や店舗で使用する電気代・水道代などの公共料金
  • 業務を他の会社へ委託した場合の外注費 など

一方で、融資を次のような対象に使うことはできません(例)。

  • 店舗付き住宅を購入する際の「自分の住宅部分」の購入費用
  • 賃貸目的で建てた集合住宅のうち「自分が住む部屋」の購入費用
  • 資本金・増資資金
  • 借り換えのための資金、など

また新創業融資制度は、次のような業種では利用できません(例)。

  • 貸金業等
  • パチンコホール等
  • 社会保険事業団体
  • 政治団体
  • 郵便業、など

※参照:日本政策金融公庫公式HP

日本公庫の新創業融資制度で融資を受ける流れ

実際に新創業融資制度で融資を受ける際の流れについて見てみましょう。

融資相談

事業の本店を置く場所を管轄する日本政策金融公庫の支店に赴き、融資の相談を行います。自分が始めようとしている事業への融資の可否、申し込みに必要な書類など、気になることを何でも相談しましょう。
日本政策金融公庫が解説している「事業資金相談ダイヤル」で電話相談することもできます。

融資申し込み

必要書類を揃え、日本政策金融公庫の支店に提出して融資の申し込みを行います。郵送で書類を提出しても構いません。

面談

申し込みが受理されると、審査の担当者から面談の通知が郵送されます。面談日時、面談時に持参する書類などの大事な内容が記載されているので、漏れなく目を通すようにしましょう。
面談は1時間程度。自分の事業計画を自分の言葉できちんと説明できるかどうか、自分の強みや弱みを自覚しているかどうか、創業に向けた熱意や意気込みはどの程度か、業界の動向を把握しているかどうか等、様々な質問がなされます。

実地確認

審査担当者が事業予定地や自宅などを訪問し、実地確認を行います。実地確認には、融資を申し込んだ本人の同席を求められることがあります。

審査結果通知

面談・実地確認から1週間程度で審査結果が通知されます。融資可能な場合には借用証書などが郵送され、融資不可能な場合にはその旨が記載された文書が郵送されます。

融資を受けるための手続き

借用証書、預金口座利用届などの必要書類を揃え、日本政策金融公庫に提出します(郵送可)。提出した書類に不備がなければ、提出後、約1週間で指定の口座へ資金が振り込まれます(振込手数料を差し引いた金額)。以上で融資の手続きが完了です。

新創業融資制度における創業計画書の作り方

新創業融資を申し込む際の提出書類の中に創業計画書があります。審査において非常に重要な書類となるため、ポイントを押さえて丁寧に作成するようにしましょう。

新創業計画書を作る時のポイント

新創業計画書には、日本政策金融公庫が公開している書式がありますが、必ずしもその書式を利用する必要はありません。ただし、いずれの書式を利用する場合でも、次の8つの項目を詳しく記載する必要があります。

  • 創業の動機
  • 経営者の略歴等
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係等
  • 従業員
  • 借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

それぞれの項目を記載する際のポイントを確認しましょう。

創業の動機

事業成功に向けた熱意を伝えるための重要なフロントページです。思い付きで事業を始めようと思ったわけではなく、時間をかけて計画的に練り上げてきた事業であることをアピールしましょう。利益の追求だけではなく、事業の先に達成したい社会貢献上の目標なども記載すると良いでしょう。
また、なぜ今のタイミングで創業を決意したのが、家族や周囲の理解を得ているかなども具体的に記載しておいたほうが好印象です。

経営者の略歴等

審査担当者が事業の成功可能性を判断する重要な材料となります。始めようとしている事業の経験があるかどうか(会社員時代と同じ業種、など)、あるとすれば経験年数は何年程度か、その業種において実績があるかどうか(会社員時代の実績、など)などを具体的に記載します。また、経営者としての知識・経験があれば、それも併せて記載しておきます(法務、労務、税務、経理など)。

取扱商品・サービス

事業で取り扱う予定の商品やサービスについて記載します。単に商品・サービスの内容を列挙するだけではなく、それらのセールスポイント、競合の中で自社を選んでもらえる根拠、集客方法なども具体的に記載するようにします。

取引先・取引関係等

具体的に狙っている顧客ターゲット層、そのターゲット層の集客可能性、仕入先の確保など、取引関係について具体的に記載します。

従業員

従業員が必要かどうか、必要であれば人数は何人か、各従業員の役割は何かなど、業務フローをイメージしながら記載します。

借入の状況

申し込みをする本人の借入状況を記載します。住宅ローン、自動車ローン、カードローン、奨学金など、返済義務のあるものは全て記載しなければなりません。
審査の過程で、日本政策金融公庫は、本人の借入状況を個人信用情報機関に問い合わせることがあります。虚偽の状況を記載してもすぐにバレるので、正直に申告しましょう。

必要な資金と調達方法

創業資金と運転資金が具体的にいくら必要で、その資金をどのようにして調達する予定かを記載します。自己資金を用意している場合は、その金額も記載します。
自己資金の大きさは、事業に対する熱意をアピールする大事な項目です。日本政策金融公庫では、申告した自己資金が本当に存在するかどうかを確かめるため、通帳原本の確認を行います。

事業の見通し

創業後の収支の見込みを記載する項目です。収支の予想数字、同業他社に比べた際の数字の実現可能性、創業者自身の生活費も含めた上での返済計画等々、事業に関連する様々な数字について客観的根拠を添えながら記載します。

新創業計画書と事業計画書の違い

新創業計画書と似た言葉に事業計画書があります。新創業計画書とは、創業の前後に作成する「これからどのような事業を始めるのか」を説明する書類で、事業計画書とは、事業が軌道に乗っている際に「今どのような事業を行っているか、今後どのような展開を予定しているか」を説明する書類です。
事業計画書は現状の数字を根拠に作成できますが、新創業計画書は予想の数字を基に作成するしかありません。その点において、事業計画書よりも新創業計画書のほうが作成の難度は高いと言えるでしょう。

制度融資とは何か?

日本政策金融公庫とは別の融資方法として、制度融資と総称される資金調達方法があります。制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会の3者が連携して行う融資のこと。3者それぞれが、次のような役割を担いながら連携して事業者に融資を行っています。

地方自治体

金融機関が設定している利子の一部、または信用保証協会に支払う信用保証料の一部などを補助し、融資利用者の負担軽減を図っています。

金融機関

制度融資において、実際に資金を融資する役割を担っています。なお制度融資は、一般的な銀行や信用金庫であれば利用できますが、ゆうちょ銀行や農業協同組合では利用できません。

信用保証協会

融資を受けた人の保証人としての役割を担っています。もし融資を受けた人が返済不能となった場合、代わって信用保証協会が金融機関へ返済を行います。なお制度融資を利用するためには、金融機関と信用保証協会の2つの審査に合格しなければなりません。

信用保証協会が関与しない「プロパー融資」について

地方自治体や信用保証協会が関与せず、金融機関が単独の責任のもとで行う融資のことを、制度融資に対して「プロパー融資」と言います。
広く行われている「プロパー融資」ですが、創業から第2期までの実績がない事業者に対して「プロパー融資」を行うことは、金融機関にとって大きなリスクとなるため、審査は厳しいものになるでしょう。事業の初期段階で「プロパー融資」を利用するためには、通常、不動産担保や連帯保証人が必要となります。

助成金・補助金を活用する方法もある

創業資金の調達方法には、新創業融資制度や制度融資などの他にも、国や自治体が直接行っている助成金・補助金制度があります。
助成金は、国や自治体が設定している要件を満たしていれば、誰でも受給することができます。補助金は、国や自治体が用意している予算の範囲内において、要件を満たしている人が受給できる可能性があります。

融資とは異なり、助成金・補助金には返済義務がありません。創業を予定している方は、融資よりも先に助成金・補助金の制度を確認しておいたほうが良いでしょう。

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